●プロジェクト概況
本プロジェクトは2つの出発点から始まっている、すなわち既存建築がもっている美しい自然環境をどう活用するか、また、いかに再生後の建築を合理的に作りだすか、の2点である。このような大規模な改造プロジェクトは日本ではあまり例がなく、また、もともと地雷工場だった建築物をデヴェロッパーの投資で改造するというのも、今の中国の改革における一つの特徴的なできごとと言えるだろう。
本件は天津泰達投資公司と万通不動産が共通で投資した別送のプロジェクトである。敷地は天津の郊外にあり、もともとは地雷工場があった広大な土地(70ha)である。施主は工場の集会所とオフィス棟を宿泊飲食施設とセールスセンターに変えることを計画し、これが別荘地区全体の接待のための基地として想定されていた。
BMAは施主から宿泊飲食施設(延床1500平米)とセールスセンター(延床665平米)の外観改造と内装設計、ランドスケープ設計を依頼された。2006年2月から設計を開始し、5月に工事着工、10月に竣工して施設の使用が開始された。

●基本戦略
本改造プロジェクトの最大の特徴は、原建築を赤レンガでくるんで建物を再生させたところにある。2つの原建築はどちらもレンガ-コンクリート構造で、改造前は建築の外観はほぼ壊れていて原形をとどめていなかった。機能上の要求から、集会所を宿泊飲食施設に改造した建物では、メザニンフロアを足して1階建を2階建てに変更し、さらに屋根の形状も変更した。オフィス棟をセールスセンターに改造した建物は1階のままだが大幅に内部空間の構成を変更している。外壁はどちらの建物とも新しく作りなおしている。
BMAは現代的なデザインの建物を多くの工業製品建材を用いて実現してきた設計事務所であり、施主が今回レンガの外壁をもつ建物を強く求めたのに対し、どう対応するか最初は迷いもあった。結果として、レンガを用いて現代性と歴史性の融合したデザインの建物が目指されたが、これは我々BMAにとっては挑戦的なことであった。レンガという伝統的な建材を用いて、施主のレンガへの嗜好を受け入れつつ、どのような現代建築を作ったらいいのか?という問題に答える必要があったからである。

●レンガを利用してどのように新しい外壁を作るか―レンガ•スキン
伝統的な建材であるレンガを使うという前提の下で設計が始まった。結果として我々が採用した方法は、レンガを使って外壁に凹凸を作り、レンガ•スキンとでも言えるような表面を作ることだった。宿泊飲食施設、セールスセンターのどちらにもレンガ•スキンの設計概念を適用している。原建築の窓の位置を調整後、外壁に3-4層のレンガ面をさらに重ねあわせている。立面でみると窓周りに秩序のある凹凸が生まれ、平面で見ると階段状の外壁ラインができる。この外壁の作られ方は新しい外壁が構造的な強度を持つばかりでなく、建物外壁の断熱性能を高めることにもなる。また薄いレンガ面を重ねることで、厚い1枚の壁が強く内外を仕切るよりは圧迫感を減少させる視覚的効果もある。ここでの我々の目的は、伝統的で重いレンガという材料を使って、軽い印象を与える建築を作ることだった。薄い面を重ねたように外壁を作っているので「レンガ•スキン」と呼んでいる。

●閉じた空間をどのように開くか―ダブル•コリドー
セールスセンターに改造した原オフィス棟は典型的な中廊下形式の平面で、廊下の両側に部屋が単調に並ぶ、とても閉鎖感を与える内部空間を持っていた。中央廊下の両側の部屋間の仕切りも構造壁なので簡単に取り壊すことはできないし、もしこの中廊下式のプランを守って各室を商談スペースに再生しても圧迫的な空間になることはわかっていた。そこで仕切り壁を構造に影響がない程度にわずかに撤去し、中央廊下のとなりに接してもう1つ連続する廊下的なスペースを確保して2つの廊下をドアなしで隣接させることで、廊下の閉じた印象を開放的なものに変えた。新たな廊下的なスペースに接する商談室の壁はガラスとし、開放感をさらに高めている。このダブル•コリドー式平面は、建築の閉鎖感を和らげ、廊下を中心とした開放的な空間を作ることに成功している。

●新しい屋根の処理
原オフィス棟は斜めのガラス温室屋根を持っていて、これを我々は別荘地区全体の模型を展示する展示スペースとして再生する必要があった。再生設計を開始したときはすでに屋根のガラスはなく、鉄骨の梁が残っていただけだった。我々はまず鉄骨梁を再度計算、設置しなおし、ガラス屋根の詳細を再考した。南向きのガラス屋根部分にはガラスの外側に木ルーバーを縦向きに設置し直射日光の射し込みを抑えている。同時に梁下に蛍光灯を設置して間接照明にしている。
宿泊飲食施設に改造した原集会所は80年代の国家標準に従って作られた建物であった。我々はこの屋根をすべて取り除き、もともとの屋根より傾斜を大きくしてルーフトップの高さを高くしている。また南北両端の端部を斜めにカットすることで、立面の正面性を強調している。

●ランドスケープ
ランドスケープは建物の外壁―レンガ?スキンと関係が生まれるように計画されている。外壁の一番出っ張ったスキンのラインが、そのまま連続して、現場で余った古いレンガをしきつめたストライプの床を形成している。ストライプの間の部分はグレーの御影石を敷きつめた。地面にはLED照明を仕込み、既存の樹木はそのまま残した。


プロジェクト名: 天津天馬国際クラブ
設計:
BMA北京松原弘典建築設計諮询有限公司
設計担当:
松原弘典  中山大二郎 张婷婷
所在地:
天津市
敷地面積:
4286.3平米
建築面積:
1548.9平米
延床面積:
2164.5平米
構造:
RC+レンガ
設計期間:
2006年2月-4月
竣工:
2006年10月
施工:
江蘇南通二建
施主:
天津万通時尚置行有限公司
撮影:
舒赫
ウェブサイト:
http://www.savillarow.com/