●水と道を類似させることで、江南水郷の記憶を継承する
青浦地区は歴史的に天然の湖が多く、上海の周辺でもっとも昔から人が居住していた場所と聞いています。本案は、「緑色水都」としての青浦新城の特徴をより際立たせるために、中心公園を六角形の地割で計画しているところが最大の特徴です。
昔の水郷地帯は、水域も道路もすべて蛇行し、自由曲線でつくられていました。またこの地域は地面と水面の高低差も少ないこともあいまって水と道が非常に近い関係にあったと思います。
ところが今の青浦区を見ると、水域はその水際線においてまだ自由曲線を残していますが、道路はほとんどが直交状の直線道路に変わってしまいました。老城区の一部で蛇行する道を見つけることはできますが、もはや多くありません。自動車交通のためには直線道路が直交する四角の地割が便利なのは当然ですが、こうしてどんどんこの青浦地区の歴史的な記憶が失われつつあります。
私たちは江南水郷の記憶(水と道が近いという記憶)を継承するために、六角形の地割で公園を計画しています。六角形(直線だが直交部分はないという形)は四角形と自由曲線の中間のような形で、直交四角形による地割より景観に変化が生まれます。直線の道と自由曲線の水という対比は弱まり、両者の関係を接近させることができます。これが水郷地帯の記憶を継承するということなのです。

●効率のよい六角形の幾何学的な地割にすることで、過去の水郷を超越する
六角形の地割をこのように大規模に適応した事例はたいへん珍しく、このこと自体がこの中央公園のブランド力を向上させるでしょう。また青浦区全体計画の中で商業文化中心と位置付けられている淀山湖大道の周辺はすべて直交格子の道路網であり、これとの対比もとても明確であり、この地域で唯一で独特の雰囲気を持つことになります。
六角形は、1つの形状で平面を覆うことのできる最大角の多角形(八角形では無理です)で、大変効率のよいものです。同じ面積を最小の辺長さで囲うことができるのも六角形です。六角格子で公園敷地を分割することで、直交格子よりも園路を短くしながら変化のある景観をつくることができるという意味で、これは水郷の記憶を継承するだけではなく、現代的にそれを超越していると言えるでしょう。
この六角形は一辺が50mの大きさで、公園全体と淀浦河沿岸にわたって六角格子で地割がなされています。おもな入り口は4か所あり、駐車場は河北岸に3か所、南岸に1か所設けています。さらに公園には六角形にそって運河が引き込まれ、5つの島状の陸地に分割されています。それぞれが違った性格の公園(臨街公園、緑化公園、文化公園、埠頭公園、浜河公園)にさらに分けられ、この中央公園は橋でつながれた「島嶼公園」のようになっています。5つの公園にはそれぞれ中心となる六角形の区域(中心六角)があり、それらを幅10mの桜並木の植えられた主干道が接続しています。主干道は非常時の車両通行路にもなる石で舗装された歩行道です。

六角形で構成された5つの公園
5個の異なる公園区は、さらにさまざまな効能を持つ六角形から構成されています。遊船埠頭は浜河公園の埠頭六角に、水上タクシー駅は緑化公園の埠頭六角に、露天劇場は文化公園の劇場六角にそれぞれ配置されています。地面がなだらかに傾斜して砂浜のようになっている臨水六角は3か所分散して配置されています。緑化公園には2つ以上の六角形をまたいだ丘陵も設けられています。
六角形はその六角形ごとに仕上げ材料が切り替わります。主干道は石貼りですが、それ以外にウッドデッキ、樹脂床、モルタル床、タイル床などの床素材が設計されています。花壇や低木高木、芝生などの緑化する要素もこうした床仕上げ建材と同等に扱われ、さまざまに異なる六角形を作り出しています。
公園部分の地面のレベルは、水面よりはやや高く、淀山湖大道周辺の都市地域よりはやや低い設定で考えています。さらに5つの公園のうち、陸側と橋で繋がれている緑化公園と文化公園の2つは、他の3つの公園よりもやや低い地面レベルに設定しています。これは淀浦河が増水したときのことを想定しており、もし増水がわずかな場合は緑化公園、文化公園の3か所の臨水六角部分で水位が上昇するだけですが、増水が進んだ場合、緑化公園と文化公園の2つの島が冠水し、さらに増水したら他の3つの公園も冠水する、というように段階的な洪水対策を考えています。公園全体が遊水地のような機能を持っているということになります。

●水と緑、自然と建築が隣接する関係
六角形の外辺は遊歩道として整備され、主干道が幅10m、そのほかの道が5mか3m幅で各六角形をつないでいます。遊歩道で囲われた六角形の内部は、緑、水、砂浜、丘陵、運動場、劇場、花壇など様々な効能が入っています。六角形ごとにまとまった世界がつくられているので、遊歩道を歩くとその前方と両側の3方向で異なる六角形で異なる世界が隣接していることがわかるでしょう。水や緑や自然がすぐそばで並列、同居することになるのです。これは直交格子で道の両側(2方向)だけに異なる世界が隣接するのとは違う体験を訪問者に提供することになります。
5つの島嶼公園の間はブリッジで連結されます。臨水六角では訪問者は直接水面まで下りて行って水に触れることができます。園内には適宜必要な建築が分散して配置されており、部分的にテント屋根などをかけて、快適な半外部空間をつくっています。
また公園の施工ではまず、六角形の外側の道路だけコンクリートなどでしっかりとした床の遊歩道をつくります。六角形の遊歩道で囲われた部分は、土を盛ったり削ったりして高低差を作り変化をつけます。削った土は園内で盛り土として使って、土を外に出したり、外から土を持ってくることをせずに工事費を抑制することを考えています。


プロジェクト名:
六角公園
設計:
北京松原弘典建築設計諮詢有限公司
設計担当:
松原弘典、李志超
所在地:
上海市青浦地区
敷地面積:
606790平米
設計期間:
2008年11月 - 2009年1月
施主:
上海青浦地区規劃局